アメリカンオークとジンファンデル

こんばんは。

ソムリエのYosukeです。

 

今回ご紹介するワインは、ファンタジックなエチケットも魅力的な「HillBlade」。

味わいもまた、エチケットに描かれた剣から連想されるような鋭く研がれた刃を思わせる、シャープな酸味や苦味が印象的です。

この、特徴的な「切れ味のある口当たり(アタック)」が何から生み出されるのか…ソムリエの見地から考えてみました。 

Hill&Blade Lodi Zinfandel

■ほどよい「オーク樽」の香り

カリフォルニアをはじめ、「ニューワールド(新世界)」と呼ばれるワイン新興国は「アメリカンオーク」と呼ばれる樽を使用することで、チョコレートやココナッツを想起させるような、はっきりとした樽香を付与させたワインを産み出す傾向があります。

一方、フランスやイタリアなど古くからワイン造りを行っていた「旧世界」と呼ばれる産地では「フレンチオーク」と呼ばれる樽を使用し、ニューワールドより軽めの樽香…控えめなヴァニラ香を付与するにとどめるような造りがよく見られます。

さて。

ここでHillBladeのワインを見てみると、カリフォルニアワイン…それも「ジンファンデル」という果実味たっぷりの品種を使用しているにもかかわらず、その樽香はというと、非常にエレガントなのです。

アメリカンオーク樽をはっきりと効かせた濃厚なフルボディ赤ワインは、前述のようにチョコレート系のアロマを帯びます。伴って、渋みの中に甘みのような口当たりが生まれ、味わいも柔らかく滑らかに感じがちです。

しかしこのHillBladeは樽の要素を抑え、チョコレートを思わせるニュアンスは控えめにされております。そしてその分だけ使用品種「ジンファンデル」本来の果実味、葡萄の皮から抽出される渋み(タンニン)、そして酸味をダイレクトにワインに閉じ込めることに成功していると感じます。

さらに、この造り方にはもうひとつ、隠された効果があります。

樽をはっきりと効かせすぎると、ワインの前面には「ヴァニラやチョコレートを思わせるニュアンス」が出すぎてしまい、そのワインやブドウが本来有している味わいや個性、品種特性を覆い隠してしまうことがあります。

一方でHillBladeのように樽の使用を調整し、その香りをやや控えめに付与することにより、そのワインに内在されている様々な複雑味を、樽香に塗りつぶされることなく感じられる一本を造ることができるのです。

爽やかさはハーブ。酸味はダークチェリーやベリー。さらにはピリっとしたスパイシーなニュアンスも有する赤。しっかりとした骨格を有しながらもバランスが良い…カリフォルニア産でこのようなスタイルのワインと出会うと、その進歩と多様性に驚かずにはいられません。

そして、このHillBladeの面白いところがさらにもう一点。

上記のような複雑味、口にしたときにそれぞれ感じる異なったニュアンス。

それらは抜栓後に時間が経ち、空気と接触してゆくにつれ、柔らかく溶け合いまろやかな味わいへと変貌してゆくのです。 

飲み始めてから、だんだんとワインの味わいが変化してゆく…いわゆる「ワインが開く」という変化を感じる楽しみも感じられるカリフォルニアワイン「HillBlade」。

お召し上がりいただく2時間程度前に抜栓したりデキャンタージュしてみたりするのも面白いかなと感じた一本でした。

 Wine Drop 代表 Yosuke