ソムリエYosukeのワイン講座 - ナパバイナパ ピノ・ノワール
こんばんは。ソムリエのYosukeです。
本日はカリフォルニアを代表する名醸地「ナパヴァレー」より、一族で素晴らしいワインを産み出すSCOTTO CELLARS(スコット・セラーズ)の赤ワイン「NAPA BY N.A.P.A. 2018 Pinot Noir」をテイスティングします。
このワインを造るスコットセラーズなのですが、

N…ナタリー
A…アンソニー
P…ポール
A…アン
…と、ワイン造りに携わる一族4名の頭文字を繋げると、なんとその産地の「ナパ」と同じ“N.A.P.A.”と読めてしまうのです。
カリフォルニアのナパヴァレーでワイン造りを行うには運命的すぎる名を持つ醸造家による、赤ワイン。
飲む前から楽しくなるようなエピソードとともに、早速テイスティングしてみたいと思います。
■テイスティング
はっきりとした濃厚なダークルビーカラー。エッジ(グラスの水面)にほの見える紫の色味がなんとも蠱惑的。
本来エレガントで線が細く、色味も明るめな傾向のあるピノノワールにしては、濃厚な外観に感じます。
香りをみてみると、オリーブオイルやシナモン、クローブといった複数のスパイス香に、シガーの灰を思わせるフレイバー。華やかでありながら、非常に複雑で奥行きのあるこのアロマ…おそらく強いポテンシャルを秘めているワインであるということが、飲む前から強く伝わってきます!
抜栓したての味はもちろんですが、時間をかけてテイスティングするとどんな表情を見せてくれるのか…非常に楽しみになる香りを持っていると感じました。
さて、味わいはというと個性的なアロマに対して口当たりが瑞々しくまろやか。上質なバターやチーズを思わせる滑らかさは、樽によるニュアンスでしょうか。
ゆったりとした果実味を伴いつつ、ほのかに甘やかに広がるまろやかさはエレガントで、ピノノワールらしい表情。
渋さや苦さはやや控えめ。しかし決して軽くはなく、ゆったりと包み込んでくれるような豊かな果実味が感じられます。
余韻が後半へ向かうにつれ、ほんのりとした酸味を伴うイチゴやラズベリー、ブルーベリー系の果実味を感じさせてくれます。お洒落に後味を締めくくってくれる感じですね。
口当たりが良く、するすると召し上がることができてしまいそうな一本ですが、逆に時間をかけて味わうことで開かせてみるのも面白そう。
洗練の裏側に力強さを秘めたカリフォルニアの赤ワインです。
■実際にひと晩おいて「NAPA by N.A.P.A. 2018 Pinot Noir」をテイスティングしてみました。
それでは実際に時間をかけて味わうことで、「NAPA by N.A.P.A.」の味わいは変化するのか?翌日も重ねて同じボトルでテイスティングを行いました。
ワインが閉じていると感じたからではなく、冒頭で「強いポテンシャルを感じる」と紹介させていただいた通り「時間をかけて味わうことで可能性が広がりそう」というソムリエとしての好奇心がその動機ですね。
一夜明けると香りはバニラやバタークリームが中心となり、一層柔らかく包み込むようなアロマを帯びます。抜栓当日はどちらかというと複雑味に富んだアロマが前面に出ていた感がありましたが、角が取れてまろやかになり、樽のニュアンスが前面に出てきたような雰囲気かもしれません。
味わいもまた、みずみずしい雰囲気も有していた抜栓当日に比べて一層濃厚さが増してまいります。しかしエレガントさは失われず、穏やかな酸味とともにほんのりとしたチョコレート香を感じる仕上がりに。
そこで、チョコレート香と合わせるイメージで、実際のチョコレートとあわせてテイスティングしてみました。
すると、穏やかになっていたチェリー系の酸が甦り、バターの滑らかさとチョコレートのニュアンスに酸味も加わることで、とても楽しくワインのポテンシャルを味わうことができました。ぜひお試しいただきたいペアリングです。
ちなみに造り手のスコットセラーズのおすすめはサーモン、グリルチキン、ハム、ロースト七面鳥とのマリアージュ。比較的しっかりしたお肉料理を提案してくれるところが興味深い。
■ワインが開く、ということ
ワインの持つ面白さのひとつとして、1本のボトルの味わいが時間とともに変化してゆく様子を楽しむことができる…という点があります。
「そんな話を聞くことがあるけど、本当なの?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
軽く解説するとワインの香りには、「瓶詰めされた初期に感じ取りやすい香り」と、「長期熟成により発生しやすい香り」があります。
たとえば、果実香やお花などのアロマは比較的フレッシュなワインに多く現れがちですが、土やスパイスなどの香りがはっきりと感じられるまでには、年月を要します。
つまり「瓶詰め直後」に抜栓するのか「5年後」あるいは「10年後」に抜栓するのか…そのタイミングにより、ワインの前面に現れる香りが変化してくる事があるという事ですね。
…とすると抜栓時期次第では
・初期に感じがちなフルーツ香が沈み込んでいる時期で
・なおかつまだ土やスパイスなどのフレイバーも現れていない時期
にあたってしまう可能性もあり、その場合は香りが弱く、感じられるというわけです。
また、香りの弱さの他にも
・渋みが頑強すぎる
・酸味が鋭すぎたりする
ように感じる場合には「ワインが閉じている」と考えて、そのワインを開かせてみようとするのも面白いかもしれません。
また、今回の「NAPA BY N.A.P.A. 2018 Pinot Noir」のように複雑味に富む存在感のあるワインも、開くことで新たな表情を見せてくれる事があります。
■「閉じたワイン」を開かせるために…
最後に。
今日からできる「閉じたワインの楽しみ方」を紹介させていただきます。
閉じているワインは「空気と触れ合わせる」ことにより香りが揮発し感じ取りやすくなります。
実際の方法としては…
・注がれたワインをグラスの中でくるくると回す(=スワリング)
・飲むよりも前に抜栓しておく
・レストランなどであれば、デキャンタージュをお願いする
・軽くテイスティングしたら、翌日にとっておく
などが主な手段としてあげられるかと思います。
ぜひ参考していただき、ワインを楽しんでいただけましたらと思います。
Wine Drop 代表 Yosuke