ソムリエYosukeのワイン講座 - エステート1856 カベルネ・ソーヴィニヨン

ソムリエのYosukeです。

カリフォルニアなどのワイン新興国…いわゆる「ニューワールド(新世界)」と呼ばれる産地において「葡萄の栽培からワインの瓶詰まで、一貫して自分たちの手もとで完結させる造り手」を“エステート”と呼びます。

<img src="https://cdn.shopify.com/s/files/1/0222/5772/9600/files/estate1856-history3_480x480.png?v=1640245981" alt="Tzabaco Rancho Vineyards" style="float: right;" />

さて。そこで今回紹介する造り手の名は「エステート 1856」。

1856とは、彼らがはじめて葡萄畑を手にした記念すべき年を示すナンバー。

実に160年以上を誇る歴史により紡がれた、小さなブティックワイナリーの手掛けるカリフォルニアワイン…早速テイスティングしてみたいと思います。


【抜栓直後のテイスティング】

主体となる品種がフルボディワインを産み出す世界的品種「カベルネ・ソーヴィニヨン」ながらも、濃すぎることなく輝きを感じられる外観。ややオレンジがかったガーネット寄りの色味には緩やかなグラデーションが見て取れます。

ワインにおけるオレンジという色は「熟成感」を示す傾向があります。

味わいにも熟成感を伴ったエレガントなニュアンスが感じられそうで、期待の高まる佇まいですね。

アロマにはバタークリームやナッツ、ラムレーズン、ミルクなど樽のニュアンスを感じさせつつも滑らかな香りが漂います。

お花など植物性の香りに加えてシナモンやクローブなどスパイスを思わせるニュアンスもあり、幾層にも重なる香りが非常に複雑な魅力を演出してくれています。

抜栓後、時間とともにますます広がりをもち変化してゆきそうな雰囲気がありますね。

口当たりは厚みがありつつも、良質なココナッツオイルを感じさせるふくよかな滑らかさ。

中ほどよりゆるやかに、心地よい苦味を伴った酸味が広がってゆきます。

余韻にはシャープでキレのある苦み・渋み(タンニン)が残り、存在感あるしっかりとしたカベルネ・ソーヴィニヨンをいただいたという充足感が残ります。

さて。

ここでこのワインをデキャンタージュしてテイスティングしてみたいと思います。


【デキャンタージュとは】

「デキャンタ」という専用のガラス容器に、ワインを移し替えることです。

レストランにおいては、ソムリエの華やかな見せ場のひとつという印象を抱く方もいらっしゃるかもしれません。

デキャンタージュは、単にワインの入れ物を変えるだけではありません。

デキャンタージュにより触れることができるワインの奥深さがあるのです。

まず酸味が穏やかに、角の取れた味わいになると言われております。かつて中国では「デキャンタージュされたワインにおける味わいの変化」の調査がなされ、デキャンタージュ後のワインの酸やポリフェノールが時間とともに減少していくという研究結果が確認されたことがあります。

そして“香りが開く”という変化が現れることも。瓶詰めされているワインは酸素を強く欲している状態にあります。酸素の量の減少はワイン内の香りの成分の化学変化へとつながり、結果、そのワインの持つ香りは減少してゆきます。

そこでデキャンタへとワインを注ぐことにより一気に酸素を与えると、ワイン本来の香りが甦る可能性があるわけですね。

この「Estate 1856 Cabernet Sauvignon」をデキャンタージュしてみたいと感じたのは、まず抜栓直後の香りの複雑さ。

奥深く絡み合ったアロマが空気と結びついてほどけ、より豊かに香るのではないか…と感じたためです。

第二に、余韻に感じたしっかりとした渋み。

全体にまろやかでクリーミーな樽のニュアンスも感じられたため、デキャンタージュによりまた違った柔らかな表情を見せてくれるのではないか…という仮定からでした。

それでは。

あらためてデキャンタージュ後の同じワインをテイスティングしてみたいと思います。

judging a glass of red wine

【デキャンタージュ後のテイスティング】

樽が醸し出すバタークリームのような香りに加え、ベリーやカシスなど、果実味を感じるアロマが加わります。ゆったりと落ち着いた雰囲気だった抜栓直後に比べて、光が差し込んだようにパッと華やかな香りが生まれ表情が一変します。

口当たりもまた、厚みの中に上品な酸味が生まれ、インパクトが感じられるようになりました。香りの中に生まれていたベリーやカシスの酸…これが味わいにも反映され、渋みやコクの中に酸味がひとつの芯を通してくれるような感じです。

余韻はお花のような華やかな香りが鼻に抜けるようになり、心地よいです。

一方で抜栓直後に感じられた苦味は柔らかく穏やかになり、渋みというよりはその重さ・厚みだけが快く余韻となり残ります。


【ESTATE 1856】

カベルネ・ソーヴィニヨンやプティ・ヴェルドといった品種をボルドー風のスタイルでブレンドし、こだわりのワイン造りを続ける「エステート 1856」。家族経営の小さなエステートが世に送り出すことができるワインの本数は、決して多くはありません。

ですが、だからこそ1本1本のワインに惜しみない手間と愛情を与え、160年以上もの間培われてきた経験と知識をボトルへとつぎ込むことができるのです。

ちなみに、造り手の「ESTATE 1856」自身もまた、このワインについてはデキャンタージュをおすすめしております。「デキャンタなんて持ってないし、面倒だよ」という方は召し上がる3時間程度前に抜栓してみるのも良いでしょう。そして抜栓直後と3時間後の味わいなどを比べてみるなどの味わい方もまた、面白いですよ。

エステート自体のウェブサイトも非常に読みごたえがあり興味深いです。

estate1856 bottle line upよろしければワインとあわせてお楽しみくださいませ。